2015長月杯1回戦は今年初めての因縁の対決「澤村明憲 対 金澤敏明」

澤村が▲52銀を指した場面より後編を解説

 

澤村が▲52銀を指した。
△55角を覚悟の上の一手だったのだろうか。はたまた形を再び作り直す発想だっただろうか。
後手の金澤敏明の寄り筋が全然見えないのが、なんとも流石。

 

△55角▲41金△22玉▲43飛成となった場面。
澤村明憲が飛車を切った。これでもまだ寄り形が読めない。
いったい何が狙いだっただろうか。これは読めなかった。

 

△67歩▲78玉となったところ。
ここで金澤敏明のほうから損のない交換の手。しかし澤村明憲氏は玉寄りは即決め打ち。
というよりこれはもはや見切っていたのかもしれない。だが、どう考えても後手の金澤敏明氏の玉は寄ってこない。先手澤村の玉も寄せにくかったからなのだろうか。

 

いずれにせよほんの僅かなミスが命取りになる高いレベルの終盤戦。
観客は釘付けになった。

 

△43金▲76歩となった場面。
互いに攻めのポイントとなる駒を抜く。
終盤戦の終盤戦といったところ。

 

△12玉を指す。
この大詰めの最終盤で攻めでなく先逃げだったのだろうか。
真意は不明である。

 

▲14歩△同歩▲13歩△同玉▲32銀となった局面。
▲23銀成からの詰めがこない。後手の金澤敏明からの寄せもなし。

 

その後、メモ書きがミスのため取れていないが、澤村が手詰まりとなり、105手にて後手金澤敏明が勝利した。

 

総括としてこの両名の対局。

 

序盤の構想から中盤の壮絶な攻防戦、どう転ぶか最後まで読めなかった終盤戦も見所は満載であった。

 

金澤敏明の△12玉の即逃げなどは今までに見ない戦術であっただけに違和感があったものの、もしかすると他の戦術でも既に先手澤村が良かったのかもしれない。

 

そう考えると終盤の勝負の分かれ道はもう少し手前にあったわけで、澤村の飛車捨てのタイミングからの寄せだったのだろうかと"タラレバ"論は尽きなくなる。

 

それからその直前、72手目△38金は若干疑問が残る展開であったが、その後の、未稼働であった51角を使うための攻めの督促の場面で、そこから△55角が決まった際、後手金澤敏明が優勢になったかに思われた。だがその直後に鮮やかな澤村の切り返し。

 

将棋は通常、我々素人レベルでは好手を指した後が最も危ないものだが、まさにそれを証明できる終盤だったと考えることができる。澤村氏は、△33角で角を戻しつつ△55角まで打った際はもう勝利目前と過信していたかもしれない。

 

勝負の綾とは片付けられない策士と策士のハイレベルな闘いであった。

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