決勝で金澤を破って優勝した昨年の弥生杯
この当時の月1の親善杯では穏当な対策を採用したわけだが、澤村もそれはある程度予測していたようでその後も指し手はある程度迅速だったのも事実。
そしていきなり端から稼動をはじめた。
澤村明憲が同級生ライバルの金澤敏明に対し「こうして伊藤流でなく収めようとするのは裏切りだ。」と、愛情を込めた忠告を捧げんばかりに。
彼はそういう律儀で義理堅い性格の男である。
真意に澤村は何をしてくるか分からない独創的な将棋を指してくれる棋士の一人である。
思い返せば、この金澤敏明戦も先手がひねり飛車で交戦してきたのに対して、彼は一度6二にまで送り込んでいた玉を、あえて5二にまで一旦下げ、さらには少しづつ少しづつ気づけば穴熊に潜り込んでしまっていた。このとき結果は快勝。
変幻自在の指しまわしで時に往年のライバルである金澤敏明すら跳ね除けていた。
いくら彼が将棋の申し子的な表現で奉られてもこんな指し方は思いつかないでしょう?とでもいいたげな棋譜だった。
実はこの二人、昨年の弥生杯でもその後激しい乱打戦はあったが、澤村がどうも煮詰まらず、金澤優勢の盤上であった。
ところが、ここから彼は意外性を魅せた。
若干差が詰まったのか、だがまだ後手がよいのは動かないし負けることはなさそうでもあった。
そんなことをあれこれ考えているうちに、急に後手金澤の玉の受けが利かなくなったのだ。
先手澤村は玉は詰まない。後手玉が詰み筋になってしまっていたのだ。
これには金澤も頭を抱えて投了。
してやられたという表情で対戦後に完敗を宣言していた。
いつも対局中に不気味な笑顔で困惑してくる澤村。
読み上げ役の島田良太も心なしか笑いをこらえているようにも見える。
反省会でも澤村の陽気で軽快なトークが満載だった。
澤村は今年の親善杯1度しか優勝できていない。
このときはライバル金澤敏明と対戦せずに決勝で小島を破り優勝を飾っている。
翌日のツイッターで優勝までの経緯を解説していた澤村だったが最後にぽつりとひとことつぶやいていたのが印象に今でも残る。
「金澤とはいつも比べられてここまでやってきて、あいつはサラブレットのエリート扱い。僕は木曽馬(笑)、でも観に来てくれている方はそんな木曽馬がサラブレットの馬に勝つ対局を観たいんじゃないかな?」
そう記したあと彼は数ヶ月の県外出稽古の旅に出たのだ。
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