金澤敏明二段と澤村明則初段の対局の攻防から学ぶ

金澤敏明二段と澤村明則初段の対局中、局面を変える指し手

 

●深読みし過ぎたか?優勢から一転。

 

細かな采配で攻め、先手澤村明則初段が優勢で進行していた中盤前の局面。
▲74歩を指したあたりから展開が一転する。
香車をどうするのだろうか、と見ていたが馬を逃がすと金を詰まれる。そのため直前に▲57銀を上げていれば香車は問題なかったのだろうか。対局者が金澤敏明二段ということでまさに裏の裏を描く攻防が招いた結果と言えるだろうが、せっかくの好機を捻りすぎた戦術で進んだ結果でもある。▲93歩成の端攻めから、▲75銀で捻じ伏せていた場合の結果も、タラレバであるが見たかったシーンだ。

 

●珍しい不発王手の局面

 

▲77桂戦術から進んだ中終盤戦。いまいち寄せ方に珍しく精細を欠く金澤敏明二段。▲14香の王手が失敗に終わったのは明確だった。さらに王手を押せ押せでつめたとしても、左が薄くて限界がある。▲24香車と連携して圧力があればという場面だが、金澤敏明二段の本意は果たして。

 

●気が付けば沼地に足を

 

午後に入り、後手番が4連続で続いた澤村明則初段も少し飽きを感じていただろうか。
角交換で振り飛車に対して▲78金と受けられたあたりから、約147手にも及ぶ攻防戦が続く。
しかし、終始後手澤村明則初段の優勢で迎えた最終盤。 またしても金澤敏明二段の欺くような戦法が炸裂する。▲76角指しは見えたが、気が付くとその手が▲93銀からの詰めの形になっている。澤村明則初段はどのタイミングでこれに気づいたかは分からないが対処は遅れた様にも見えた。ということは気づけていなかったのかもしれない。▽99香成が勝敗を決する大きな指し手であったのだ。
▽99香成りは龍見切りをつけ飛車打ちを狙う。一か八かなのか其の先に何か思考があるのか。
なぜなら▽98歩で香車をシャットアウトという選択支も考えられたからだ。
再度の香打ちにも、桂馬の犠打で防ぐ澤村明則初段の姿が印象的だった。

 

●迷いの無いスピードに翻弄される澤村明則初段

 

メンタル面が追い込まれるようなスピード。
またもや澤村明則初段が後手。そして先手金澤敏明二段の中飛車が襲う。
一連の手の打ちが思考が短く、翻弄される澤村明則初段。
並大抵の棋士であればメンタル面で負けているような圧力を感じてしまうが、この両名は幾度と対戦している盟友。手の内はある程度は想像がついていただろうが、それにしても速い。

 

最終盤、▲53歩〜▲52歩成が王手にならず攻めあぐねる金澤敏明二段。▽85桂が決まれば、寄せが見えてくるのだが▽85桂のところで▽17飛車成もあった。

 

展開的には終始後手金澤敏明二段が押し続けていた。▲53歩は見えていたが▽61玉を下げたがために形成はフラットに戻ったようにも見えた。なぜならば次の局面に見える▲52歩成が王手になってしまうからだ。
たらればになるが▽71玉と遠ざかる戦法で強気に指し▽85桂が入る。⇒▽85桂に対して▲86玉なら▽93金と角を落とせて▽77角▲75玉▼84金のつめろでいけたのかもしれない。

 

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