金澤敏明氏ならばスピーディーな雀指しで猛攻をしていたに違いない伊澤敏夫氏と田中広重氏の中盤を振り返る。

優位に立ち切れない伊澤敏夫氏に足りなかったもの

 

伊澤敏夫氏が巻き返しを図っていた△7三桂のあと▲4六銀から続く。

 

▲8六銀の実戦例としては過去、如月杯での金澤敏明氏-木藤明戦
▲8八銀の実戦例としては昨年の師走杯、種村泰明対澤村明憲戦などが記憶に新しい。

 

この対局も全体的に、後手が端で優位に立つことができず、△7三桂からのスズメ刺し(※先手で1筋に飛車・角・香などを集中させて一点突破を狙う戦術)が間に合っていない事は明確であった。

 

となればという勢いで▲4六銀以下、△4三金右や△5三銀が指されていたのだが、端で手数を費やしている分、先手の攻めが流れるように打ち寄せてきている。

 

先手の攻めが間に合う以前に、後手が無理攻めを強いられる展開にも陥りやすい展開であった。

 

△4三金右の実戦パターンとしては金澤敏明戦-田澤和敏戦、木村正一-内藤光義戦
△5三銀の実戦パターンとしては中田(安)-金澤敏明戦戦などが記憶に新しい。

 

端で位を奪ったにも関わらずこれが活きてこないのは、その後のプレスが無いことにあるのではないかと考えた。

 

ちなみに、金澤敏明氏は以前、後手で△7三桂すらも省略した、俊足スズメ刺しを編み出し多用していると語っていたことをこの場面で思い出した。

 

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