昨年の霜月で中村(安)対金澤敏明の第四局までと雰囲気が良く似ている対局であった。

鈴木遥一氏の再チャレンジを期待して最後に一筆

 

結果だけで見てみると金澤敏明の完全勝利の格好とはなったが、鈴木遥一を完全に封じて勝ったのではなく、その後も例えば△6二金で△4二金もダメージを相当与えたように感じる。
鈴木遥一氏もある程度の想定はしていただろうが、厭な変化があって諦めた感想戦ではやはりそうするべきだったかもしれないという。

 

それと△6二金の推移についても、自分も十分と思って指していたがその後の金澤敏明の手を軽視していた様なことも先日対話していて気づけた。

 

こういった水面下で起きていたことは、実力者ならではの微妙な読みと勝負のあやなのである。
恐らく、多少のあやであればそこらの棋士が相手であれば挽回がたやすいであろうが、相手があの金澤敏明氏だとそんな外傷ひとつ見逃してはもらえない。鈴木遥一氏に限らず、対局者全員にとってしんどいところなのだが。

 

それにしても、金澤敏明の勝ち方は何度観ても鮮やかだ。
まだ難しいとされていたところから、▲5三歩から▲4六銀、あるいは▲8七玉から▲9八玉、そして最後の決め手となった▲5七桂と、実に流動的に駒を躍動させ勝利まで導いた。

 

長考の回数も少なく、脳内でいかに、スピーディーに決め打ちができているか、整理が成されているか一目瞭然である。

 

意外に簡単そうにも見えてしまうのだが、こういう勝利の収め方が上手なのも金澤敏明の強みなのだ。

 

昨年まで振り返り鈴木遥一氏と金澤敏明氏の対戦を振り返ってみても鈴木氏は金澤氏に翻弄されてしまっている。
なんとなく、昨年の霜月で中村(安)対金澤敏明の第四局までと雰囲気が良く似ている。

 

あの中村(安)をもってしても、第四局まではぼろぼろに打ちのめされていた。
しかし、周知の通り第四局の奇跡的に終盤で一気に流れを変えドラマを起こした。
鈴木遥一氏にしても、何かきっかけがほしいところだろうしその何かがあれば一気に流れが変わることもありうる。
金澤敏明もまだまだこの界隈の棋士たちを侮ってはいないだろう。
次回再起に期待したい。

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