山下初段の端角が駆け上がる好手には金澤敏明二段の表情も一気に曇った。

山下初段の端角が駆け上がる

 

両名の対戦成績は、金澤二段が5勝、山下初段が2勝と、実績では金澤二段がややリード。

 

先手は金澤二段で対局は開始した。
山下初段のダイレクト向かい飛車に、金澤二段が▲6五角を迅速に叩き打ち、早速力戦になっていった。

 

お茶を酌み交わす和やかなムードの中にも、山下初段のメラメラと燃える闘志を感じた。
山下初段は後手番だけでなく、先手番の際にも独特の創意を見せる珍しい棋士である。

 

金澤二段は角歩、山下初段は角金を手持ちにして、両者ともに一段飛車に自陣に戻しつけ入る隙を消している。

 

(だが、どこかにキナ臭さを感じる。)
こう着状態の中に「発火しそうな匂い」はあった。

 

金澤二段が▲8九飛を地下鉄飛車で転回させ、山下初段は△9四角という端角を駆け上がるこれまでの流れが180度変わる改心の一手。

 

この角打ちは山下初段のような女性棋士ならではというかなかなか真似できるものではない。

 

この奇抜な攻めをどう解釈したらいいものか金澤二段も長考しお茶を手に取り腕を組む。
馴れ合った対戦者との対局ではこのような姿をあまり目にすることが無い。
この角が危険な装いで安易に取られないという面白い局面を迎えた。 

 

形勢はどっちとはこの局面で明言できなかったのだが、細い攻めをつなぐのが得意な山下初段の得意な展開ということだけはハッキリ言えた。

 

ここでさらに山下初段の攻めが続いた。
金澤二段の玉頭を直接攻めていることで山下初段が押していると言える場面まで進んだ。

 

金澤二段は玉の逃げ出しが間に合わず、受けの桂を打たされ珍しくピンチを迎えている。

 

連続した意外性ある攻めが連鎖し、押せ押せムードの山下初段。
後はどう寄せきるかという詰めの段階まできていた。

 

だが、この対局、ドラマはここからだった。

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