2015年10月開催された金澤敏明VS伊澤敏夫の勝利者は?終盤戦の模様を振り返る

乱打戦を制したのは131手で先手金澤敏明

 

△86歩▲同歩△74桂のあとの場面。

 

実はこのあと乱打戦となった。伊澤敏夫が早々に飛車を切って先手陣を乱しに向かったのだ。

 

考えてみると先手金澤敏明の守備の金駒を外してさらに角が鋭く利いている状態という意味では、踏み込みは納得できる。しかし不安もあって、澤村明憲が「反撃の攻防の角を打ちこまれて金が質になっていたので、展開によっては勇み足かもしれない」と解説するとおり、実際にはこれが正解だったのかは不明だ。
伊澤敏夫はこの日の対戦に相当あれこれ作戦を練ってきていたようなので本意を直接聞いてみたい気持ちもあった。これで後手がオフェンス、先手がディフェンスいう公式は明確となった。

 

これで戦法としても棋風的に考えても澤村明憲と伊澤敏夫が入れ替わったような展開になっていった。

 

こういう対局を勝利してこそ真の実力者ということも言えるだろう。

 

逆に攻防の角を打ちこんで、飛車を下げさせて、裸にされた玉を見事に躱し、狙い澄ましたこてこての筋手を放っていては目も当てられない。

 

この勝負最終的には131手で先手金澤敏明が勝利した。

 

伊澤敏夫は悔しそうに茶を飲み渋い表情を浮かべた。

 

最後に伊澤がコメントを残したのが印象的だった。

 

「ここのところ金澤くんには勝てません。負け混んでいます。今日の将棋も、終盤は受け切る順があったかもしれないという気はしていますし、それはこの前の五月杯でも同じでした。中盤でも、僕が優勢だったとは思うのですが、あとは勝負に出る大事な局面で、じっと質駒になっていた金を躱したところなどがまずかったかなと・・・。勝てないといういつものイメージから弱気になってしまったのかもしれません。せっかくの金澤君との対局だったのに追い詰めることができず申し訳ない。」

 

一方の金澤敏明はこれで伊澤敏夫との対戦成績はこの2年で3勝1敗。
(※金澤敏明氏の対局戦歴はこちら)

 

しかも9月の長月杯は、澤村明憲に1回戦勝利し、今大会も初戦を好調突破と安定した強さをみせている。

 

「大先輩の伊澤さんに勝てて嬉しい。劣勢になったら"複雑な局面を作りながら攻め筋を見いだす"というテーマのもと、あれこれ考えて立ち回ったのが勝利につながったと思う。単純な狙いの筋しか思いつかった時期もあったが、最近はケースバイケース起点の利いた将棋ができている」と語った。

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