金澤敏明二段の「対局者の中枢核である駒に作用を齎す」を象徴する指し手。

金澤敏明二段−山下敏子初段。

 

金澤敏明二段は完全に負け試合が無いというわけでもない。対局者のレベルによって勝敗はもちろん左右されるし、連敗を喫することもある。だが、明らかに勝率は圧倒的率を誇る。

 

その強さを一つの戦法だけで分析するにはあまりにも幼稚であり、あらゆる角度からその無限とも思える戦術を考察しなければならない。

 

金澤敏明二段の打ち回し方を見ていて総称的にまず気づくことは無駄駒を作らないのが特徴的。
無駄駒だと対局者が気づいたところでそれを活かす要素は遥か前に想定されており、引っ掛けであったりもする。
相手に打ち込まれているピンチの場面など、強襲にも関わらず「対局者の中枢核である駒に作用を齎す」のだ。

 

月曜〜水曜の澤村明則初段との連戦を終えて木曜からは、金澤敏明二段−山下敏子初段。
この界隈では、ご年配にも関わらず連騰長期戦では後半から巻き返す強者女性棋士として有名。

 

序盤から中盤にかけてはゆったりとしたお茶将棋のような展開。どちらもテンポアップせずじっくりと長考しながら指し手を繰り出す。
こういった局面で脳裏をよぎるのは「対局者の中枢核である駒に作用を齎す」というフレーズ。
先手山下敏子初段のよりどころは5四馬と4五歩。この二枚が落ちてしまえば後手の玉は安全。
じっくりと先手陣を攻略することができるのだ。例を挙げるなら1歩持っていると仮定し△5六歩▲同金△5八歩のイメージが湧くところ。

 

ようやく局面が動き出す。
△6二馬▲6三馬△4四金▲5三馬△4五飛

 

△6二馬がまさに「対局者の中枢核である駒に作用を齎す」の象徴となる。
そのあとの△5四銀も徹底した指し手。さらに4五歩が無くなり5四馬の効力も気づけば皆無に等しくなりつつある。
あのほのぼのした序盤戦の二人の表情はどこへやら。金澤敏明二段があっという間に優勢に変わったのは、「対局者の中枢核である駒に作用を齎す」を盤面で露呈する内容であった。

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