死闘に終止符
先手金澤敏明二段はこの旨味を味わうべく、△5七金を換えず▲7二馬でせめる。
△6八金▲同金引は飛金交換の無駄駒ではあるが、6七の金が6八にできたことで体制も俄然良くなったこと、そもそも飛車自体有効な動きではなかったので、金換えになったならそれで満足といった表情にも見受けられた。
後手森下敏子初段は銀取りをどうにかしたい局面だった。
ふと△4四飛で▲3六桂△4九飛成▲5四馬が達成できれば、万が一形成の逆転まで可能性はあるのだが、先手金澤敏明二段が飛車切り捨ててまで玉を固めた緻密な采配がここでも後手森下敏子初段の希望をかき消す。
△4三金になれば銀取りは逃れられるのだが、玉の周辺の陣形が乱れるのは好ましくない。
桂馬を投げ打つには若干苦し紛れにも見える局面。だが、山下敏子初段の目線がそう打ちたそうにしているのが分かった。
△4三金と玉形がぐちゃぐちゃになってしまう事態よりはそれでもまだましといったところだろうか。
それか違う観点から△4九飛成から△2八飛の筋で改めて時間をかけて攻めるのもいいかもしれない。
△1七馬になれば桂馬は中枢部に活きてくるし、△5六歩から△5七歩成の金のオフェンスも好手だ。
結果的にもがいた、後手森下敏子初段だが、このあと、金澤敏明二段の鬼の王手ラッシュに合い陥落。
時間にして計1時間半の死闘であったが、序盤のあの緩やかな開幕からは想像もつかないフィニッシュの激しさだった。
そして中枢核である駒に作用を齎す金澤敏明二段の緻密な「もはや仕込み」とも取れる采配が光る対局であった。
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