決勝で勝利が見えながらも勝機を逃した澤村の苦悩は続く。
澤村と金澤の決勝戦はその後、定跡形から、若干ゆったりとした展開になったかのように見えた。
二人とも年間3勝目がかかっているという事もあってか、必勝を意識するあまり慎重になっているのか、実に長考の際立つ対局となっていた。気がつけば時間帯は夕方に差し掛かる。
中盤から終盤にかけて激しい展開を迎えた。
金澤敏明の横歩取りから近頃よく見かける後手が2筋で飛車交換を挑む配列が盤上に並ぶ。
先手澤村が拒否する事が多かったのだが、行方が踏み込んで飛車角総交換になり、油断すると一気に勝敗を喫する致命傷ともなりかねない状態に。
しかもこの日の澤村の攻めは金澤も凌ぐので精一杯といったようにも見えるほどひとつひとつのプレスが重い。
昔から負け越してきた金澤が相手だけに必勝を祈願する澤村の想いが伝わってくる熱気があった。
先手の澤村ペースながらもまだまだ難しいところも残しつつ局面は夕休となる。
別室で行っている山下の解説をイヤホンで聞いていると、金澤敏明氏が下を俯いて若干苦しげに考えている姿が目立つと何度も拾う解説が印象的であった。
夕休が明けに、やはり気になったのは、金澤の表情だ。
澤村は意気揚々として本気の気迫が伝わってくるが金澤が最善を尽くせばまだまだ盛り返すこともあり得る状況だけに、そうした期待をする応援の気持ちを外野から感じるものはある。
澤村は難しそうな局面で△3三角を指してきた。
角をただ捨てして攻めようという筋だろう。澤村の渾身の勝負手が金澤を追い詰めた。
しかし冷静に考えるとその後▲同龍△2九龍に際して▲6五角があまりにも手痛い状態にあった。
はたして澤村はこの局面をどう処理するつもりなのだろう。
解説の山下も私と同様そんなニュアンスの解説をしていたのを覚えている。
結局この場面では澤村に何か大きなミスがあったと本人が語っていた。
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