伊藤流を受け継ぐ2人の侍の盤上の乱舞
7年前、澤村明憲氏、金澤敏明氏が中堅に差し掛かって当時の話。
金澤敏明氏との親善杯決勝で敗れたあと澤村明憲氏はこうつぶやいた。
「△6二玉がねぇ。。」
この日の彼は横歩取りの△6二玉については、その後の対局でも実戦パターンとして出ていたのだが、さらにその後の山下敏子戦でも披露してくれたのでしっかりと覚えている。
実は澤村はこのとき準決勝で対局した木村正一戦でも△6二玉を登用している。
つまりこの親善杯の観覧日にももしかするとそれが観られるかもしれないと期待して足を運んだのだが、金澤敏明戦が横歩取りになってしまったため、それほど期待しないで観ていた記憶がある。
またこれをあえて受けて活かして応戦してギャラリーを沸かせようと言う金澤敏明も当時からサービス精神旺盛な男であった。
先手の澤村明憲は▲3三角成△同桂▲2一角と最も激しい流れの中で△6二玉をすぐさま咎めに転じた。この流れでは成否が注目の的であった。
この日の盤上も陣の配置自体密集しており至極激しい乱戦になることは免れなく観るものを興奮させる展開だった。
だが、この日の澤村の二局を含めて△6二玉は今まで四局に現れてはいたが、実は先手で伊藤流を採用した棋士が一人として存在していなかったのだ。
ギャラリーとしては退屈な試合になってがっかりなのだが、先手がひねり飛車模様にする作戦が濃厚で金澤の前の二局とも先手が勝利していた。
利点を活かす作戦がある上に、後手が露骨に研究してきた感をアピールしている雰囲気にわざわざ上級者は踏み込まないのかもしれない。
また、対策を講じてきた結果として後手が指せると裏づけさられているという説も巷にはあったのも事実。
しかし、推測論だが中飛車の超急戦と同様にその時その時の対策によって評価が変わってしまうと、最終的にはどちらが勝利を収めるのか予測をすることが困難な破天荒さを秘めた対戦となる。
以後は先手で伊藤流を採用する棋士が彼らの活躍によって増えることもこの頃からふつふつと感じ始めていた。
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